あなたには音をあたしには色を
「うあああああおーーおふーーっ」
「うわっ、何よアンタ、びっくりするなあ」
胸のソワソワを打ち消したくて、思わず出た言葉は自分でも意味不明。
さっきまでのあのライヴハウスの熱気が、粘液みたいにあたしにまとわりついているんだもの。
「……ガン」
あたしは右手にダブルチーズバーガーを握りしめたまま、堅く冷たいテーブルに軽くおでこを打ち付ける。
「ちょっとー大丈夫? 小夜子ー」
「んーー」
この胸の感じを、いったいどんな言葉で説明しようか。
あたしは項垂れて、頭をテーブルにつけたまま一美の顔を見上げる。
「なに、アンタ。今頃ミッチーにやられちゃった?」
「………」
「恋だよ、恋、それは」
「……は」
……恋?
あたしが?
光郎に?
「違うと思います……」
しいて言うなら、恋をしたのは光郎のギター。
そもそもあたしは、いっつもあんなに光郎の側に居たんだ。
今さらアイツに恋なんかするもんですか。