あなたには音をあたしには色を
………
「でも、すごかったでしょ。えーーと、バンド名、なんだった?」
「……知らない……」
「何がすごいって、あれ全部オリジナルなのよねえ。曲もだいたいはミッチーが作ってるらしいじゃん? ……て、ちょっと聞いてる?」
一美はフィレオフィッシュにかぶりつきながら、眉間にシワをよせてあたしを見下ろしている。
マックのテーブルに額を載せたまま、あたしの心は今、ここにあらず。
食べかけのダブルチーズバーガーだけが、あたしの右手に柔らかい感触を残して、このマックの空間とあたしとをかろうじて繋げてくれている。
いつまでもあたしの中にまとわりついて離れない、光郎のギター。
音楽のキラキラ。
……音楽って、こんなに執拗に、心に付きまとうもんだったっけ?