あなたには音をあたしには色を
2.
次の日も、あたしの体や意識のあちこちには、光郎のギターのキラキラの残骸が乱舞していた。
「はよっすーー」
アトリエへ向かう階段で、まるで図った様にバッタリ光郎に会う。
……おっと。
あたしは思わず身構えて、妙に緊張などしてしまう。
我ながら、何だか変なの。
階段や廊下でバッタリなんて、よくある事なのに。
けれどもやっぱり、ギターを弾いている光郎と、弾いていない光郎とではまるで別人だな。
と、光郎の顔をしげしげと眺めて思う。
昨日、あんなにワイルドに見えた髭も、もはやただの無精にしか見えない。
顔だってこうして冷静になって見れば、唇がやけに厚くて男前でも何でもないのに。
目も一重だしさ、大きいけど。