戯れる堕天使
「・・・思わないけど」
「もう、ライブに行って、ステージを見上げるしか、会える方法がないと思ってた人からのお誘いなのに。
そんな態度取れるわけない」
言うと、ふっと、歌ってる悟の姿が目の前に浮かんだ。
こうやって、馴れ馴れしく話してしまってるこの彼は、あの、ヒトなんだ。
あの、手の届かない距離感は、とても切なくて、神聖で。
その感覚を思い出すだけで、感動の余波が来て、目が潤む。
「どうか、した?」
「あ、えと・・・。悟さんのライブ、また観たいなって」
悟が止まる。
「え?観ちゃダメなの?」
「そうじゃないけど。・・・わかった。じゃあ、予定分かったら連絡する。
チケットもあげる」
じゃあ、何なんだろう。さっきの、迷いのような間は。