戯れる堕天使

「それ、わかる」

類はやっと友之を見た。

「オレも、ルシアンの前のヴォーカルに、そういう感じ抱いてた。そばで演奏してるのに、オレは演奏してなくちゃいけないのに、いちいち感動しちゃうんだ。

自分が一瞬どこ弾いてたかわからなくなるくらい、聴き惚れてしまう」

友之も、類を見た。

「そういう意味では類に変わって良かったな。聴き惚れる、なんてないから」

どういう意味だ。

「ただ、余計な心配をさせるから、結果は一緒だけど」

そうだった。

あたしは、いつも体力不足で倒れるから。

ヒヤヒヤさせてしまっている。

「・・・気をつけます」

反省して、つぶやく。

なのに、思いがけず、

「何を!?」

怒った声が返された。

「・・・倒れないように」

「そうだろうな」

「迷惑なんでしょう?」

友之の顔に、怒りがこもる。
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