戯れる堕天使

でも、何を言っていいのか分からない。

悟が、目を逸らす。

ほら、どこかへ行ってしまう。

何か言わないと。

せめて、何かしないと。

類は思わず、悟の袖を引っ張った。

悟が振り返る。

「もう、行っちゃう?」

「・・・いろいろ、挨拶しなきゃ。よかったら、後でまた、戻ってくる」

後で。

こういうの、社交辞令??

類は、手を離さなかった。

「・・・ついってったらダメ?」

悟が困った顔をする。

「・・・わかった」

類はぱっと手を離す。

困らせるのは嫌だ。

悟はちょっと黙ってから、

「まだ、何も言ってないけど。・・・いいよ。ついてきて」
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