勇者様、魔王様と旅をする ぷれ編
くぃっ、と顎に指を添えられて上を向くとがっちりと魔王様と呼ばれる人と目があった。
――朱い、赤い、綺麗な瞳。
「__へぇ、」
にやり、と私を見て笑う目の前の男を見て肝が冷えた___。
「ぅおっ!!」
腰が抜けた状態で投げるのは結構つらい。
鞄は下に置いて来ちゃったから小銃はない。
力の入らない脚に喝をいれて無理矢理立つ。
目の前の男は投げたナイフを余裕で避けてまだ、私をにやにやしながらみる。
それが無性に、苛つく原因で………。
太股につけてあるホルダーから母に新調したといわれた武器を、抜いて振り抜くと
「___え、」
「ほう……」
10ノールだった棒が伸びて、鎌のように刃が出て来て曲がる。
びっくりな仕掛け刃だったとはっ!
ぎゅっと握ると呼応するように、ドクンと高鳴る。
「魔王っ!覚悟しなさいっ!!」
じっと、目の前の男を見て笑うように駆け出す。
しっくりとくる質量に、このまま振り抜くと。
「___見つけたっ!」
「ふきゃあっ!」
鎌は避けられた上に、ぎゅぅっと中身がでそうなくらい強く抱きしめられて。
「__なぁ、名前教えてくれない?」
「……はぁっ?」
確かな熱量を持った瞳に見つめられて、
勇者、魔王様に抱きしめられて困惑中。