勇者様、魔王様と旅をする ぷれ編
弐 魔王様、勇者様に一目惚れす。
「なぁ、」
前髪に魔王の息がかかって、ぞわりと背筋に悪寒が走る。
一刻も早くここを抜け出さなければっ!!
「な、なっまえを言ったら離してくれますよねっ!?」
「あぁ、約束する。」
「………違えないでくださいよっ!!」
真っ赤になってキャンキャンと吠える私はさぞ滑稽だっただろうが。
この魔王といったらこちらをとろけるような瞳で見て甘く、優しく微笑っている。
「あぁ」
私は渋々口を開く。
「………ジル、ジユリル・レイクトスです。」
名を口にした瞬間に強く、抱きしめられてぱっと腕を放される。
咄嗟に距離をおく、と魔王はやはり嬉しそうに笑って。
「ジル、いい名だな。やはりお前みたいな麗しいものにはよく似合う。」
さらり、と私を褒める。
そしてあろうことか。
「あぁっ、その柔肌に髪に、頬に、唇に全てが俺のドストライクなんだっ!ジルッ!好きだっ!一目惚れなんだっ!!」
いつの間にか近づいた距離。
魔王がこれでもかというほどに熱烈に愛を囁く、というか吐露する。
「なっ!」
「ジル、俺の名を……ゼルクレスト、とその唇で呼んでくれ」
咄嗟に引いた腰をがっちりと固定され、頬には優しく指先が触れる。
恋い焦がれるような瞳は私を捕らえて離さない。
「………ぜ、……る……さん」
確かな熱量を持った瞳に負けて、魔王の名を呼ぶと嬉しそうに笑って。
「ジルッ!愛しているっ!!」
なんて、抱きつこうとするので。