可憐な華にくちづけを
ふわりと私の長い髪を持ち上げ
ぽんぽんっとわ柔らかい布で押し拭く
その一定のリズムが落ち着く。
「痛くないですか?」
「痛くなんてないわ、…気持ちい。」
「…良かったです。」
初めて聞いたかもしれない、
彼の上ずったようなイントネーション
わたしの今の体制じゃ表情を見ることは
できないけれど、
少しでも表情の変化があったなら
とても嬉しい。
「ふふっ、ねぇ…名前忘れてしまったわ。」
「蓮、です。」
「あぁ、そうだったわね。…ねぇ、蓮はわがままお嬢様のお気に入りになって嬉しい?」
無理矢理決められた わがままお嬢様の
お気に入り。
どんなことだって、有無言わずに
命令を聞かなくちゃならない。
そんなのただの面倒事。
彼も…蓮も、そう思ってるのかしら。