守りたいモノ
―――紺の塔
「お、おい。
そんなに急がなくてもよくないか?
ここは魔族以外は開けられないだろ?」
黒玄は、
自分の前をそさくさと歩くジュリアに
自分も急ぎ足で着いて行っている。
ジュリアは黒玄の言葉が
耳に届いていないようだ。
彼女達は塔の螺旋階段をひたすら登っていた。
彼は何故、主がこんなにも焦ったように
急いでいる理由が分からなかったが、
急に自分達の向かう方から
冷たいものが流れてきたような気がした。
警戒の為に彼女の後ろ姿を見ながら、
自分の愛用している
"灰煌"という名のダークグレーのボディーを
持つ拳銃を取り出した。
彼女らの歩みは
闇の深いところから光の濃くなるところまで
止まることはなかった。