恋の魔法に


俺はできると言った。
勝てると言った。

勝ちに行きたかった。



「ぃっ……」



手首を少し曲げただけなのに顔を歪めるほどの痛さを受けた。


ラケットがするりと手から抜けたあの瞬間。


床に落ちたラケットを拾って持ち直したが、


――あぁ、負ける。



そう思ってしまった。




1月末。
寒い日はまだ続いている。


中はTシャツで、ジャージを羽織っただけのこの格好。
……寒すぎる。



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