恋の魔法に
「あ、電車……」
結城くんがそうつぶやいたので線路の方を見ると、私が乗るはずだった電車が駅を出発していて目の前を通っていった。
線路沿いのこの細い道は近道。
少しだけ暗いけど近道だから私はけっこう利用している。
「先輩もあの電車なんですか?」
うん、と短く言って頷いた。
うすい水色の屋根をした小さな駅はもう見えている。
あと少し歩けば到着。
「同じですね」
「そうなんだ。どこで降りるの?」
「終点の一個前です」
結城くんが歩き出したから私もその後を追うように歩いた。
隣には並ばない。
少し斜め後ろを歩く。
なんとなく……ね。