【短編】彼氏は女子恐怖症
待ちに待った放課後になった。

皆が次々と教室から出て行き先生までもが職員室へと行ってしまった後、最後に残るのは和真とあたしになった。


「和真!・・・帰ろう?」

「うっ、ん。」


少しだけ苦笑いを浮かべた和真の表情を見逃さなかった。
あたしの左胸がズキンと痛んだ気がした。

和真・・・困ってる?
一緒に帰るの迷惑だった?

相変わらず帰り道でも会話なんかなくて、ただ静かな時間が流れるだけ。
でも、あたしは和真と一緒に帰れているだけで嬉しくて幸せなんだ。
そんな事を思っていた時、少しだけ和真の手とあたしの手が当たった。手の甲が少し触れるだけ。


「え、うわっ!」


たった触れただけなのに・・・。
こんなに嫌がられたら、さすがに悲しいよ・・・?
いくら女の子が苦手だからって、ここまで嫌がる事ないのに。


「あ、真央・・・ごめん。これは、その。・・・真央?」


和真の心配そうで機嫌を伺う声が耳に入ってくる。
こうやって・・・いつも和真は謝ってくる。
本当に和真があたしの事を好きでも、こんな反応をされたら自信がなくなるよ。


「・・・良いよ!気にしないで、和真。あの、先帰るね。用事思い出しちゃった。・・・バイバイ。」


和真の声なんか聞かずに走り出した。
きっと和真は一緒に帰りたくないと思ってたんでしょ?
涙でぼやける視界に足が動かなくなる。
ピタリと足が止まると、何とも言えない悲しさが込み上げて来た。


和真、ごめんね。

自分から誘ったのに用事を思い出したなんて嘘を付いて先に帰って・・・。
だけど、だけどね・・・あんな反応は止めて欲しかったな。
あたし、和真の彼女なんだよ?



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