タイムマシン
地下に続く階段を降りると、タバコと楽器の匂いに包み込まれた。


ドアを押し開けると、あの時と変わらない時間が流れていた。





東京に来て、最初に訪れた場所。



あの人と私が始まった場所。




「やっぱり来たな。


あんただけが見つけると思ったよ」




奥の席でギターを爪弾きながら、懐かしい顔のマスターが言った。




「奥、いるよ」




カウンターの奥の通路を顎で示した。



急かす思いと、躊躇する思いで


その場所がずっと遠くのように思えた。





小さな扉を開けた





もみ消され山になったタバコと


氷が溶け乾いたグラス



そのテーブルの前に咥えタバコのあの人がいた



どこを見ているんだかわからないあの人の前に



そっと私は跪いた。







彼はゆっくりと視線を合わせた。





















< 4 / 6 >

この作品をシェア

pagetop