【BL】木枯らし



“いい加減退院して学校行きなさい”


そう親に言われて、俺は明日退院する。


それをユウに告げたら、案の定寂しそうに笑った。



「とうとう来ちゃったか。」
「うん。」
「残念。」



眼下の景色を見るユウに、ずっと言いたいことがあった。



「本当は桜好きでしょ?」
「嫌いだよ。」
「……嘘だ。」
「本当。だって桜は、」



ちょっと間があった。



「俺が生きているうちに、その姿を見せてくれない。」
「やっぱ好きなんじゃん。」
「だから嫌いだって。」
「嘘だぁ。」
「桜よりヒロが好き。」



あまりにも自然に言われたから、一瞬気がつかなくて。



「ヒロが好き。」



2度目でやっと意味を理解した。



「それも嘘?」
「本当だって。俺、嘘言わないから。」
「へぇ。」
「ヒロにも好きだって言ってもらいたいけど、いいや。」
「?」
「言われたら死にたくなくなるし。怖くなるし。」



卑怯だと思った。

自分ばかり気持ちを吐き出して、こっちのことも考えてくれてもいいのに。




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