樫の木の下で
樫の木の下で
銀杏並木の道を歩きながら、白い溜め息をつく。
タカシは、浮気している。
彼のコートのポケットから、ルビーのペンダントを見つけ、大喜びしたわたしに、タカシは引きつった笑みを浮かべた。
ああ、これはわたしへのプレゼントではなかったのだと、悟ったときの、どうでもいい感じ。
彼が浮気するのもわかる気がした。
ずるずると十年も付き合ったせいか、わたし達の関係はすっかり空っぽだった。
あれは、それを痛感させるには十分な事案だった。
学校に近づくにつれて、弾けるような、子供達の声が響いてきた。
子供は爆弾だなぁと思いながら校門を抜ける。
あの元気は凶器だ。
元気爆弾の破片を浴びながら顔をしかめ、苦笑した。
わたしにも、ああいう頃があったのだ。