樫の木の下で
校舎の裏手にまわり、細い砂利道を歩く。
使われなくなった焼却炉のそばを抜け、三つ並んだ樫の木の前に立った。
腕時計をチラッと見て、真ん中の木を仰ぐ。
ドングリがたわわに実っていた。
今にも、甲高い笑い声が降ってくるような気がした。
穴だらけのセーターを着た負けん気の強い富永君と、男の子みたいに髪を短くしたわたしが、枝を伝って飛びおりてくるような気がした。
富永君は、小学校六年間で一番仲の良かった友達だ。
中学へあがる前の春休みに引っ越してしまった。
卒業式の日わたし達は、二十五年後の午後五時ここで会おうと言って、それぞれに宛てた手紙を埋めた。
一緒に掘り返す約束だ。
時間を十分過ぎていた。
馬鹿だなあ、わたしは。
自嘲気味に笑って、シャベルを取り出す。
彼は来ないだろう。
こんなとるに足らない約束を律儀に守ろうとしているわたしが、愚かなのだ。