バッドエンドにさよならを
井上皐和。これがあいつの名前。
クラスで唯一俺に話しかけてくる男。だからって仲がいいわけではない。ただ単に出席番号が隣だから話さざるを得ないのだ。
優しさの塊で出来ている彼は、俺とは正反対。一番性格が合わないタイプだ。
俺の前に座る彼の後頭部を眺める。
「あ、宿題のプリント忘れてしもた…」
彼の隣の席にいる女子が呟いた。おとなしそうな彼女は今にも泣きそうだ。
サワは彼女の方を見てプリントを差し出した。
「これ、名前書き直して出したらええよ。」
「え、」
「僕けっこう忘れ物するけん怒られるのは慣れとるしな。」
あ、あの女今ときめいたな。