春色エクディシス
仕事を終えて、彼氏にメールを返しながら外へ出た。

「明日で、制服は卒業なんだ」

いきなり飛び込んできた声に振り返る。

初めて聞く声は少し高く、かすれ具合も絶妙だ。

「図書館って、恋が始まる場所だと思わない?」

聞きなれた台詞に、思わず目を見開く。
そんな私に、まだ咲かない桜の木の下で、彼は一番の微笑みをくれた。

そのまま、すっと隣を通り抜ける。

すれ違う瞬間。指先が触れて、肩がはねた。
びりっと電気が走るような感覚に、妙に焦る。

振り返ってももう、制服の背中しか見えなかった。
でもきっと、彼は口角を上げている。

それが、妙に痛い。
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