隣の彼の恋愛事情
「まぁ、無理もないか、あのチィ兄のイケメンぶりじゃね。
紅も、実家はなれて一人暮ししたり、チィ兄ばなれ努力してるもんね」
早希がフォローするように、にっこりとほほ笑む。

「だからこそ!今日のコンパ頑張ってね!!」
ガッツポーズをみせられ、私も一応小さいガッツポーズで早希に答えた。


――――――と、やる気を見せたものの……。
人間すぐには変われない。

隣から話しかけてくる、男の人になんとか返事はしてみるものの、ひきつり笑いで頬が痛い。

(う~ん。早希ちゃん私やっぱり無理だよ。)

「紅ちゃん。かわいいよね~」
初対面の人間の下の名前を軽々しく呼び、かわいいと誰にでも言うんだろうな。なんて、カルパッチョをつつきながらボーっと考えていた。


そして過剰なボディタッチ。もっとも苦手人種。
(私のあからさまな態度に気付かないなんて、酔ってるに違いないわ)

せめてもの救いはこのお店。
今日の会場となっているダイニングバー『T’S』は会員制で私のような一般人がおいそれとは入店できる店ではない。
(きっと今日のお医者様のだれかが会員なんだろう)

フロアの真ん中にには、青い水槽。そのなかで色とりどりの熱帯魚が悠々と泳いでいる。
カウンターの中では、イケメン(遠目に見てだけど)がいて私の知らないお酒もたくさん並んでいた。
イタリアンを基本とした創作料理は文句なくおいしくて、それだけでも今日は参加してよかったと思うことにしよう。そうしよう。


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