隣の彼の恋愛事情
「紅はさ、怒られたら必ずこの公園に家出してきて、このブランコに乗ってたよな」

「家出って」

「それで、目を真っ赤にして涙ためてるのに『泣いてない!』って意地張って」

「もう、そんな小さいときのこと覚えてないんだけど」

急にそんな話を持ち出されて恥ずかしくなってチィ兄の腕を叩く。

「お父さんや、お母さんじゃダメでさ。俺が迎えにいかないと帰らなかったよな」

「うん・・・」

小さな恋の思い出を思い出して、顔がゆるむ。

(あのころは、なんでもチィ兄じゃないとダメだった。チィ兄が世界のすべてだったから)
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