隣の彼の恋愛事情
「そんな、紅が大人になっちゃったか・・・」

足を停めて、私の頬にかかった髪を優しく指で払ってくれる。

細められた目は昔と変わらず優しいままだったけど、骨ばった手は男性そのものだった。

「昨日は楽しかった?朝帰りの紅ちゃん?」

からかうようにそう言ったチィ兄の顔はなんだか少し切なそうに見えたのは気のせいかな?

「なんでそんなこと知ってるの?」

「ひ・み・つ」

人差し指を唇にあてて、ウィンクをしたその綺麗な顔に一瞬見とれた。

そして

「できるなら、俺が大人にしてあげたかった」

そう呟いて歩きだした。

「もう!からかわないでよ」

そう言うと、速足でチィ兄を追いかけた。

後ろから必死で追いかけた私にチィ兄のさみしそうな顔を見ることなんてできなかったけれど。

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