隣の彼の恋愛事情
「約束してなかったし、斗馬忙しいかなって思って」

斗馬の顔が見えた時に、にじんでいた涙をばれないように必死でぬぐい、笑顔をはりつける。

私の顔を見て一瞬驚いた顔をした斗馬は、何も聞かずに私の両肩を抱えて立ち上がらせた。

ギュッと抱きしめられると、自分のすべてを斗馬に預けてしまいそうになる。

(今だけ、このまま甘えていよう)

エレベーターに乗った私たちは何も言葉を交わさなかった。

斗馬はただ、私の背中をさすってくれていた。

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