隣の彼の恋愛事情
「最後まで聞いて!」
思わず大きな声で斗馬を制した。
私の普段ない強い口調を聞いて斗馬はもう一度ソファに腰を下ろした。
「私、ちゃんと話すからちゃんと聞いて」
もう一度、斗馬の目を見ながら言った。
「わかった。ごめん」
静かにそう言って私に話を続けるように促した。
「チィ兄。いつも一人っ子の私を心配していつもそばにいてくれたよね。そして辛い時も困ってる時も嬉しい時もいつも私の少し前を歩いて手を引いてくれていた」
昔を懐かしんでるんだろう。チィ兄は優しい目で私を見て微笑んでいた。
「その手が大好きだったし、その手をずっと握っていたいって思ってた」
コクンと一つ頷いたままチィ兄は話を聞いてくれていた。
斗馬は前かがみになり固く結んで組んでいた手のひらをじっと見つめたまま動かなかった。
「でもね―――」