隣の彼の恋愛事情

「はぁ、最後なんだから邪魔すんなよ」

チィ兄が呆れた顔で斗馬に言う。

「最後だろうが、なんだろうが俺のもんに触られんの嫌なんだ。これでも譲歩したほうだ」

斗馬のいつものえらそうな態度が妙に安心感を与えてくれて、なんだかおかしくて笑ってしまう。

クスクス笑う私を見て、

「なに笑ってんの?」

ますます斗馬は不機嫌になったけど、それでも斗馬の腕の中にいることの喜びが体の奥から溢れてきた。

そんな私たちを見たチィ兄が、少し意地悪な顔でわらって

「三浦に愛想つかしたら、戻ってこいよ」

そういって斗馬の腕のなかの私の髪をクシャっとして、部屋の出口に向かった。

「いい加減諦めろ!俺がコイツ離すわけ無いだろ!」

そうチィ兄の背中に言葉をかけた

チィ兄は後ろ姿のまま私たちに右手をあげた。

(チィ兄、ありがとう)

最後に私はそう呟いた。

< 280 / 335 >

この作品をシェア

pagetop