隣の彼の恋愛事情
「それに?」

「お前は、追いつめられるまで俺に相談しないし。そんなに頼りないか?」

私の頭の上でため息混じりにそう話した。

「違う。斗馬が悪いんじゃないの。私が自分に自信がないから、斗馬の好きも信じられなくて」

こらえていた涙がポロリとこぼれる

「それなのに、自分から斗馬とお別れする選択ができなくて」

「俺の『好き』が信用できないか・・・」

そう言った斗馬は私の顎をもってぐっと上を向かせて、食むようなキスを私に浴びせた。

「これでも信用できない?」

そう聞いてきた斗馬はいつものいたずらっ子の顔をしていた。こういう顔を知っているのは私だけだ。

あの、イケテナイ斗馬のもう一つの顔を独り占めできなくはなったけれど、彼の本当の素顔を私は今独り占めすることができてる。

私は、斗馬の手のひらを自分の手のひらで包んで
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