隣の彼の恋愛事情
「私あなたのこと気に入っちゃった!」

まるで少女のような口調で、私をキラキラした目で見つめるお母様。

「あの~ちょっとどうも理解が追いつかないんですけど」

さっきまでとは全く違う展開に頭がついていかない。

「だって、お顔は文句なしに可愛いし、会社でのお客様からの評判もピカイチ。それに目上の人に対する敬いをすっかり持っているわ」

「それは山本さんの話ぶりからも理解できた」

そうお父様も頷く。

「だが、それとこれとは・・・」

「違いません!」

お母様に一喝されたお父様がまた小さく縮こまった。

「あなたも今日みてたでしょ、困った人がいたらほっておけない、誰も気に止めない生花にさえも気づき生を全うさせようとする姿は何物にも変えられない人間として大切なものだわ」

お父様の手をとったまま、そう説得するように話す。

「それに、あなたもわかってるでしょ。あの頃の私たちと同じよ」

「そ、それは」

そうすると、お母様は私に向き直って言葉を続けた。

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