隣の彼の恋愛事情
飲み物がワインに変わるころには私はリラックスして料理とともに、アイツとの会話を楽しんでいた。

「俺、正直家の事業を手伝うことにそこまで興味ないんだよね。」
ふとアイツがつぶやいた。

「ただ任されたから、飲食事業を手始めにやったんだけど、これが結構たのしくて。」
普段自分のことなど少しも話さないアイツが、何だかはにかんだように話す。
いたずらっ子が夢を語るみたいに楽しそうに話をするアイツの話に夢中になって耳を傾けた。

「好きなんですね。仕事。そんな嬉しそうに話するなんて予想外です。」
私が思わずクスクス笑いながらそう言うと、

「予想外ってなんだよ、俺だっていつも仏頂面じゃないんだよ。」
そういったアイツの顔が赤かったのはダウンライトだけの薄暗い部屋の中でも確認できて、私の笑いがとまらなくなった。
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