隣の彼の恋愛事情
「私、本当にただ斗馬さんが好きなだけで、何の役にたてるか正直わかりません。でもそばにいて支えたいと思うし、斗馬のそばにいるために必要ならば努力することもおこたりません、お父様とお母様のようなご夫婦を目標にして頑張ります」

私は自分の決心と思いを斗馬のご両親の前で新たにした。

「親父を見てきて、青山グループを背負って立つことがどれだけ大変か理解しているつもりだ。だからこそ俺はコイツをそばに置いて俺自身を見失わないようにそばで支えてもらいたいと思っている。コイツだけがどんな俺を知っても、態度をかえずにいつもそばにいてくれた。だからこれからも俺の一番そばでいてほしいと思ってる」

斗馬が私の手を握りお父様にそう伝えた。

心なしか手が汗ばんでいるように感じる。

「お前たちの気持ちもわかった」

「私の気持ちは?」

お母様が茶化すように言う。

「はいはい、かなえの気持ちも十分わかったから」

苦笑いをしながらお父様はお母様に答える。

「ここで反対でもすれば、一生かなえに叱られそうだよ」

そういって首をすぼめたお父様は、インターネットで調べた青山グループの社長としての顔とはかけ離れていた。

これがきっとお父様の素顔なんだと思う。その素顔をだせる場所はきっとお母様のそばなんだろう。

「紅緒さん、斗馬をよろしく頼むよ。斗馬を操縦できるのは、かなえとあなただけのようだから、しっかり頑張っておくれよ」

そういったお父様は優しく私と斗馬を見つめてくれていた。
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