隣の彼の恋愛事情
PCの時計が午後七時になった。
(私の時計だけこわれてるんじゃないかっていうぐらい、今日もあっという間だったな)
サービス残業当たり前の仕事だが、あまりいい顔はされないし、
PCを切ってそろそろ退社しよう。今日のご飯どうしようかな、なんて考えていると隣の席から、書類がそっとさしこまれた。
「――――これ、お願いします。」
思わず顔がひきつる。
(私が帰る支度してるの気づいてるよねーーー!)
嫌、ここは社会人露骨に顔にだしてはいけない。
にっこりと貼り付けたような笑顔を浮かべて言う。
「今から、ですか?」
「うん。」
(うん。それだけ?)
いったん、気持ちが仕事から離れてしまった今、私の頭の中は夕食のことでいっぱいで正直明日でもいいじゃん。って気持ちで支配されている。
(ひゃー!しかも、これ超ややこしい書類だし)
「わかりました……」
「ん。」
(また「ん。」だけ?)
退社前のウキウキ気分の私を重苦しい気持ちに一気に変えた、この人は
三浦斗馬(ミウラトウマ)
私の隣の席の営業マン。
私は正直彼が苦手――。