隣の彼の恋愛事情
黒いサラサラの長めの前髪をたらし、黒縁の大きなメガネをかけていて、表情がまったくよめない。
その上無口。

せっかく形のいい唇してるのに、もったいないな。

これで証券会社の営業がつとまるのか?サイレント営業?
でも、とってくる契約の金額や本数は日々私をぎょっとさせる。

合併前は別の会社だった彼のことは、あまり知らない。成績はいいけど人付き合いが悪いらしく、プライベートの話なんて皆無だ。

私が彼について知っているのは、営業の成績とPCのEnterキーを叩く音が大きいこと。

それと彼に似合わないだろう香水、マリンノートの香りが時々漂うことだ。

(相変わらす謎だわ。謎。この会社の七不思議だわ)

「ん。」とだけ言って自分の仕事にもどった彼を横目でちらっと見て私は作業にとりかかった。

今日は、コンビニ弁当決定―――――。




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