隣の彼の恋愛事情
「送ってもらわなくても、大丈夫ですよ。まだ電車あるし。」

「おまえな~前にも言ったけど・・・」

「戸籍上は女ですよ。もちろん。でも大人なんで大丈夫です。」

いつも言われている台詞を言い返してやると、頭をグリグリとされた。

「い、イターイ!」

「お前、最近生意気。黙って言うこと聞いてればいいの。」

頭に置かれた手を振りほどこうとしたけど、なかなか振りほどけない。

じゃれあいながら、駐車場までの道のりをアイツと歩く。

アイツの大きな手が自分に触れていることが最近嫌じゃなくなってきていた。

アイツと他愛のない話をするのも嫌じゃなくなってきていた。

これが何を意味するのかわからないほど子供ではなかったけど、でも気がつきたくないことに目をつぶることができるくらい大人になってしまっていた。


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