椿ノ華
最後の夜



「……」


屋敷を飛び出して、ふらふらと歩いていた。

下半身にまだ異物感を感じ、時折顔を歪ませる。


「…壱さん…」


彼の名前を呼べば、溢れるのは涙。

せっかく想いが通じたのに。

気付けば、携帯を取り出していた。


『はい。どうしたの?』

「…少し、声が聞きたくなって…」

『はは、嬉しいな。僕も君に会いたかった』

「…忙しく、なかったですか?」

『うん。本読んでた』

「…そう、ですか」



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