椿ノ華
「…あの、どうしてそんなに知っているんですか…?」
「ああ、桜さんから直接聞いた事もあるし、
使用人から聞いた事もある」
「…母とは、いつ?」
「…啓志の妻の葬式だ。まだ小さい君を連れた桜さんが、
こっそり私に会いに来た。
自分は堂々と御焼香をあげられないからと」
え…?
「入院していた彼女の容態が急変したらしい。葵が7歳の時だ」
「…兄は、幼少時代に両親を亡くしてしまったんですね」
「ああ…お陰でひねくれた奴に育ったよ」
「経営のセンスと顔だけはいいんだが」と、
困ったように笑った。