椿ノ華



見えていないのは分かっているけれど、頭を下げた。


「…全てを知って、抱えて、罪の意識を持つのは、私だけでいい」


何故か、ふと笑みが溢れた。


「ありがとうございました。

圭さんの言葉、嬉しかったです。

壱さんの事、お願いします」


もう一度深く頭を下げてから、屋敷を出た。



―・・・


「覚悟は決めたか」

「…お兄様」


門の所に、一台のロールスロイスが停まっていた。

椿が来る事が分かっていたかの様に薄い笑みを浮かべ、
車体に寄り掛かっている葵。



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