椿ノ華
「椿!!」
使用人に壱を呼ぶよう言い、屋敷に入った。
すぐに飛んで来た壱の表情は、
とても青ざめていて。
きっと凄く心配していてくれたんだろうと思うと、
見ていられなかった。
平然とした態度で大きなソファに座っている圭は、
今何を思っているのだろう。
「心配したんだ…気付いたら居ないから」
「…申し訳ありません」
「屋敷に帰ってたんだね…とりあえず安心した。
探しに行こうと思ったんだけど、
圭が下手に探しても見付からないんだから待てって言うんだ。
言う事を聞いておいて良かったよ」
「……」
「…でも、どうして葵が?」
目線を伏せているから、表情は分からない。
でも、とても冷たい声色だった。