椿ノ華



「椿!!」


使用人に壱を呼ぶよう言い、屋敷に入った。

すぐに飛んで来た壱の表情は、
とても青ざめていて。

きっと凄く心配していてくれたんだろうと思うと、
見ていられなかった。

平然とした態度で大きなソファに座っている圭は、
今何を思っているのだろう。


「心配したんだ…気付いたら居ないから」

「…申し訳ありません」

「屋敷に帰ってたんだね…とりあえず安心した。

探しに行こうと思ったんだけど、

圭が下手に探しても見付からないんだから待てって言うんだ。

言う事を聞いておいて良かったよ」

「……」

「…でも、どうして葵が?」


目線を伏せているから、表情は分からない。

でも、とても冷たい声色だった。



< 153 / 243 >

この作品をシェア

pagetop