椿ノ華



「諦めようって…思ったのに、傷付けたのに」

「…それでも僕は、君を愛してる」

「…馬鹿ね、壱さん」


行き場を無くしていた手を、壱の背中に回す。


「私も…愛してる。出来るなら、諦めたくないわ」

「…椿…」


涙に濡れた目で微笑み、唇を重ねた。


「…だけど、ごめんなさい」


続けた言葉に、壱は目を見開いて。


「私は…私は、…葵を裏切れない…」



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