椿ノ華
「ご入浴のご用意が出来ておりますが…
お食事を先になされますか?」
「いえ…先に入ります」
「かしこまりました」
一礼するメイドに背中を向けて、浴室に入る。
シャワーで体を洗い流しても、
心のなかで燻っているものは流れない。
「……」
浴槽に入り、何となく天を仰ぐ。
「…壱さん…」
迎えに来てくれるって、言ってた。
「…愛してる…」
「信じて待ってる」とは、言えなかったけれど。
本当に抱き締めて欲しい人に抱き締めて貰えない体を、自分で抱き締めた。