椿ノ華




「お屋敷から出られない事が、やはり苦痛ですか?」


椿は、葵から外出を禁止されていた。

パーティーに行く時、
気まぐれの葵が本当に時々買い物へと連れ出してくれる時以外は、
屋敷の敷地内限定の外出しか出来ない。

敷地内と言っても、無駄に広いため特に不自由は無い。


「…苦痛、でもないですよ。

敷地内なら自由に動けますから」

「そうですか…」

「気にしないでください。

こればっかりは、葵さんの気分次第だし」


苦笑を浮かべて、本へと視線を戻した。


「…お耳に入れようかと思いまして」

「え?」

「壱様が、麗羅様と婚約なさったそうです」


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