椿ノ華
腹違いの兄
よく晴れた日。
日当たりもいい、小高い丘の上。
綺麗に花が咲き誇るそこは、小さな墓地となっている。
「…来るのが遅くなって、ごめんなさい。…初めまして、お父様」
平たい、冷たい石に触れる。
「お母さん、久しぶり」
花束を置いて、手を合わせた。
母の墓は、祖父のはからいで父の隣にある。
「今日ね、引っ越しなの。私、南十字家に住むんだ。
お祖父様は、たくさんお父様の事教えてくれて…」
…一度でいいから、生きてるうちに、会ってみたかった。
「…また、すぐに来るね。またね、お母さん、お父様」
立ち上がり、少し奥の方で待ってくれていた執事へ歩み寄る。
―・・・