椿ノ華
「奥様…」
目が合った主治医は、小さく首を振る。
「…お祖父様…」
膝から崩れ落ち、啓一郎の手を握る。
「…椿…来て、くれたのか…」
「当たり前です…葵さんも呼びましたから、だから…」
「…あいつは来ない。仕事を優先するだろう」
「どうして…」
「私は、恨まれているはずだからな…」
そう言った啓一郎の目には、涙が浮かんでいて。
「私は…葵に、祖父らしい事を何もしてやれていない…」
「…葵から、聞いています」