椿ノ華



葵の言葉が、引っ掛かっていた。

あの用心深く疑り深い葵が、
椿に注意を促すとは、きっと相当だと。

そして椿自身も、
時折見える紫野の何処か黒い笑みに、不信感を抱いていた。


「…何か、あるのかしら」


篠山に言って、専属を外して貰って、
前と同じようにメイドを専属にしようか。

そんな事が頭を過ぎったけれど、結局実行には移さなかった。


「…綺麗…」


あの狂い咲きの桜の木の下、
青空と桃色の花に見とれていた。


「満開ね」


触れられる位置まで垂れている枝を見て微笑む。


「まるで、聖母マリアですね」



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