椿ノ華
優しく微笑んで、愛しげに椿を見詰め乍紡がれる言葉。
「だから…妹としてお前が屋敷に来た時、本当に驚いた。
祖父さんが「お前の妹を連れてくる」と言うから、
どんな女か見ようと階段の所に居たら、
ずっと会いたかったお前が居るのだから」
「……」
そんな。
そんな事が、あったなんて。
自分が覚えていない程の出来事が、
彼にとって救いになる程だったなんて。
彼は、一体どれだけの苦しみを、葛藤を抱いて、
自分の傍に居たのだろう。
それらを想像して、言葉が出なかった。
「…なのに、妹だなんて。
やっと会えたのに、ずっと想っていたのに…」