椿ノ華
するりと、葵の冷たい手が頬を撫でる。
「だから、許せなかった。
お前が、壱のものになっていくのが」
「……」
「俺で傷付いて、一生恨めばいいと思っていた。
そうすれば俺は、お前にとって忘れられない男になるだろう?」
なんて不器用で、歪んだ人なのだろうと思った。
椿の目尻には、涙が溜まる。
「…沢山苦しめてしまって、すまなかった」
「…恨みました」
「…ああ」
「どうして私がこんな目にって、兄妹なのにって」
「ああ」
「でも…家族だから」