椿ノ華
涙を拭ってくれていた手を、強く握る。
「…気付かない間に、たくさん苦しめてしまいました。
あの夜の言葉、嘘じゃありません。
…愛しています、葵お兄様」
「…椿…」
「冷たいようで優しくて、
いつも私を気にかけてくれていた事、分かっていました」
「…そう、か」
「そんな不器用なお兄様の優しさを、愛しています」
「…ああ、俺もだ。お前と一緒に過ごせた数年、…幸せだった。
人生の中で、一番に」
「はい…」
葵の目にも、涙が浮かぶ。