椿ノ華
「…伝えて、おきます。全て、お任せ下さい。
心配事は、何もありません」
「…名前を」
「はい…」
「いつもみたいに、呼んでくれないか…」
涙に濡れた顔で、微笑んでみせる。
「葵さん。愛しています」
「…ああ…俺は、お前のその笑顔が愛しかった…。
…愛している、椿…ずっと…」
ゆっくりと、一筋の涙を流して、目を閉じた葵。
「…ごゆっくり、お休みなさい。葵さん…」
力の抜けてしまった手を握り、額に当てた。
溢れた涙が、初めて葵がくれた真っ赤な椿の華の着物を彩る。