椿ノ華
「何してる」
彼の声が響いた。
驚いて顔を上げると、
彼の手には椿に向かって振り下ろされていたはずのナイフが握られていて。
「…壱さん…どうして…」
「愛の力で危険を察知したんだ」
「……」
「あれ?冗談言ったんだから笑って欲しかったな」
「…血が出てるじゃないですか…!」
壱はぱっとナイフから手を離し、
「大丈夫だよ」と微笑んでみせる。
紫野は、ナイフに付着した真っ赤な液体を、じっと見詰めていた。
「星野さん」
「……」