椿ノ華
たからもの
「椿、ここに居たのか」
「ええ、今日は天気がいいから」
お気に入りのローズガーデンで、
いつものベンチで、本を読んでいた。
「椿はやっぱり、この庭が似合う。
この家に住んでよかったな」
「貴方のお陰よ。私と一緒に、
この家で暮らす事を決めてくれたんだもの」
今、二人は正式な夫婦として一緒に南十字家で生活をしている。
「でも…南十字財閥と成瀬川ホテルの両立は大変でしょう?」
「いや…一時的だし、
何より葵の元秘書が尽力してくれてるよ。彼は葵信仰者だからね」
「ふふ、そう」
葵を慕ってくれる人間もいたのだと、何だか嬉しくなる。