椿ノ華



葵が、階段の所に佇んでいた。


「いや、時間にはまだ余裕がある。行こう」


すっと、自然と手を差し出される。



…えっと、これは…エスコートってやつ…?

「着物では歩きにくいだろう。手を貸せ」

「あ、はい…ありがとうございます…」


遠慮がちに手を握ると、ぎゅっと握り返される。


「…お兄様、低体温なんですか?」

「ああ、生まれつきな」

「…お体、気をつけてくださいね」

「お前に言われるまでもない」


わかりづらいけれど、優しい人なのだと思った。



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