椿ノ華
ざわ、と。
椿と葵が会場に足を踏み入れた瞬間、周囲がどよめいた。
「お前は堂々としていろ」
「…はい」
「腕を組め」
言われた通りに、葵の腕に自分の腕を絡ませた。
「葵さんは相変わらずお美しいわ…」
「さすが、南十字財閥の次期当主よねえ。
風格が違うわ」
そんな声が聞こえてくる。
「でも、隣の女は誰?」
「婚約者かしら…噂を聞いた事があるわ」
「でも、先日のパーティーで紹介していた婚約者は違う女だったわよ?」
そんな声も聞こえてきた。